工場見学で知る「巨大な鉄鍋で専門店の味をつくる」
発見 47
キンレイのものづくりは「おいしさ」に向けて一直線。手間がかかっても、従来にないやり方でも、必要とあらば取り入れます。巨大な特注鉄鍋も、そんな“ゆずれないこだわり”でした。
鉄鍋でなければ始まらない、「専門店品質」の味づくり
キンレイの工場の中でひときわ存在感を放っているのが、大きな鉄鍋です。お店では具材を鉄鍋で炒めながらスープを仕上げることで、野菜の甘み、魚介の旨みやコクが一体となって溶け込んでいく──その様子を間近で見て、「これは、鉄鍋でなければ出せない味だ」と痛感したのです。
工場でやる以上、厨房サイズとは桁違いの巨大な鉄鍋を導入する必要があります。メーカーからは「このサイズは難しい」と、導入の困難さを裏付ける理由をいくつも挙げられました。それでも、諦めるわけにはいきません。
熱伝導のよい鉄鍋なら食材の食感や風味を十分に引き出せる。
逆に言えば、鉄鍋がなければ、キンレイが目指す専門店の味にならないのですから。
「やるしかないんです」
「できる方法を考えていきましょう」
そんなやり取りを重ねて、特注の鉄鍋が完成しました。
“扱いにくさ”は承知の上。それでもあえて鉄鍋を選ぶ理由
おいしさ追求のために導入した鉄鍋ですが、効率や管理の面だけを考えればステンレス製のほうが圧倒的に扱いやすいのは言うまでもありません。
鉄はステンレスに比べて焦げ付きやすいため、汚れ具合を見ながら3〜5回に一度は洗浄し、一日の終わりには完全に汚れを落として油をなじませることが必須です。少しでも手入れを怠れば、次の仕込みで焦げ付きが起きてしまいます。
それでも鉄鍋を使い続けるのは、それだけの理由があるから。
鉄は熱伝導が非常に良いため、野菜のシャキッとした食感を保ちながら、甘みや風味をしっかりと引き出せます。さらに、加熱の過程で出てくる水分(ドリップ)も出にくく、素材の旨みを逃さず閉じ込めることができます。
現在、キンレイの工場で導入された鉄鍋は、「四海樓ちゃんぽん」だけでなく、「熊本ラーメン」「札幌味噌ラーメン」「台湾まぜそば」など、さまざまな商品で活用されています。
私たちの選択について、工場を訪れた取引先の方からはこんな声をいただきます。
「どう考えてもステンレスのほうが扱いやすいのに、鉄のほうがおいしく仕上がるからと、わざわざ巨大な鉄鍋を特注され、手間暇を惜しまない。そこまでこだわるメーカーさん、なかなかないですよ(笑)」
手間も管理の難しさも承知のうえで、それでも選ぶ。鉄鍋は、キンレイにとって「おいしさのための前提条件」なのです。

鉄鍋で炒めた野菜の旨みを、スープにどう活かすか
ここからは、ちゃんぽんのおいしさをどう組み立てているか、もう一段踏み込んで見ていきましょう。
鉄鍋を導入しただけでは、「専門店のちゃんぽん」に近づけることはできません。
お店では、野菜を炒めた鉄鍋の中で、そのままスープを炊き上げていきます。炒め油、具材から出た甘みや旨み、ほどよい焦げ付きや香ばしさ。それらが一体となって、独特のコクが生まれます。
大量の食材を一気に扱う工場の現場で、この工程をそのまま再現することはできません。でも、お客様の元に渡ったとき、専門店に負けないくらいのおいしさをお届けしたいというキンレイのこだわりに妥協はありません。
専門店と同じ方向のおいしさを、どのように表現するのか。
適度な焦げ目がつくまでキャベツを鉄鍋で炒めておく。そのキャベツソテーを、スープの仕上げに加えてスープの炊き出しを行っているのです。
キンレイでは炒めたキャベツを具材だけではなく、スープにも活かしていましたが、鉄鍋で炒めることで、さらなる品質の向上を実現しました。
また、キンレイではご自宅での鍋調理にこだわっています。
工場で仕上げたおいしさを、さらにご自宅で手鍋で温めていただくことで、スープ・麺・鉄鍋で炒めた野菜などの具材が順番に溶け出し、最後にひと煮立ちすることで、鉄鍋で炒めた具材の旨味がスープに溶け込みます。
これが、具材だけでなくスープそのものを、おいしいちゃんぽんの完成形へと高めていく一手となりました。


次の記事では「製麺工程における、おいしさのための積み重ね」をお届けします。
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