50年目に挑んだ「自社削り」で
風味際立つ鍋焼うどん
発見 36
鰹節をはじめとする節は削りたてが一番。その風味をだしに活かせたら、鍋焼うどんはもっとおいしくなる!試行錯誤の末たどりついたのは、工場内で節を削ってだしを取る「自社削り」の工程でした。
キンレイ開発部・黒石
2018年キンレイ入社。商品開発部門にて、様々な商品の開発に携わる。もともとは飲料のフレーバーの研究開発を行っていたため、そこで培った知識が活かせるのではないかと思い、自社削りのプロジェクトに参画。料理を科学するをモットーに日々の業務に取り組んでいます。
キンレイ生産部・稲垣
前職の外食業界のセントラルキッチンでの生産管理の経験を経て、キンレイに2016年入社、 調理グループに配属、2025年からグループリーダーとして、だしや具材の仕込み、盛付作業の管理、従業員の方への作業指導を行っております。安全・安心な商品をお客様に提供できるよう努めてまいります。
「削りたて」のすごさを知ったら、挑戦せずにはいられない
削り器で削ったばかりの節。その豊かな風味を体感したことはありますか?
スーパーなどでよく見かける花かつおにも、もちろん香りはあります。日本人にとってはなじみ深い、「おいしそうな匂い」といえるでしょう。でも、鰹節のかたい原体を削り出した直後の「削りたて」は、それとはベツモノ。削った瞬間から、ふくらみのある豊かな香りが鮮烈なまでに広がり、嗅ぐだけで「旨みの凝縮」を感じさせるパワーがあります。
この風味を「鍋焼うどん」に活かしたい。可能な限り「削りたて」に近い状態で、だしを取りたい…!
その発想の行く手に数々の困難が待ち受けていることは、取りかかる前から想像できていました。でも、おいしさのためには何でもやってみるのがキンレイです。
50年間磨き続け、愛されてきた鍋焼うどんですから、従来の商品も「十分においしい」という自負はありました。だしに使う3種の節にしても、仕込みのタイミングに合わせて削ったものを専門業者から受け取っていたので、そもそも新鮮な状態ではあったのです。
しかし削りたての風味は、そのさらに上をいく。あの風味を最大限に引き出せれば、今よりもっとおいしくできる──そして創業50周年を迎えた2025年、満を持してお届けできることになったのが「自社工場内に削り器を導入し、だしを取るタイミングに合わせて自分たちで削る」という、いってみれば非常に面倒な「自社削り」の行程を実現した、新生・鍋焼うどんです。
開発から費やした期間は約5年。「削り節ひとつに、そこまでやる?」といわれても仕方がないくらいの執念です。しかし「削りたてのあの風味」を知ってしまった以上、挑戦しないわけにはいかなかったのです。
開発部が体感した「感動のおいしさ」を言葉で伝えるために
始まりは、開発部で卓上の削り器を入手した2020年。削りたてがいいと頭では理解していても、実際のところ何がどう違うのか。データ分析で突き止めるより前に、まずは自分たちの鼻で、舌で、その凄さを体感したことが「自社削り」導入のきっかけとなりました。
「かつお節やさば節って本来はこういう風味だったのか!」と感動した開発部の面々は、「これを取り入れられたら鍋焼うどんはもっとおいしくなる」と確信。しかし、会社として取り組んでいくには「なぜおいしいのか」をデータ化・言語化して、社内外に示す必要があります。そこから、さまざまな検証をしていくことになるのです。
「これまで蓄積してきた知見を改めて見返したり、関連しそうな文献を紐解いたりしながら、ひとつひとつ地道に仮説検証を繰り返して、さまざまな角度から考えました。削り節ひとつにここまで研究する会社はなかなかないんじゃないかというくらい突きつめましたね。詳細は企業秘密ばかりになってしまいますが(笑)、突破口はやはり“いかに空気に触れる時間を減らして酸化を抑えるか”でした」(黒石)
結果として導き出した「キンレイのやり方」は、だしを取るタイミングに合わせて「削りたて」に近い状態の節だけを使うという、常識破りの方法です。
検証の結果導き出された時間内で、だしの最高峰に挑む!
「けっこうな速さで風味が変化するので、ポイントはそれを素早く止めること。削った直後にだしを取るというスピード感もそうですが、そのだしをすぐに冷凍できることも重要なんです。冷凍させたほうが、変化が少ないので。タイミングを厳密に計りながら節を削ってだしを取る、取っただしをすぐに冷凍する。それが可能なキンレイだからこそ、自社削りというのが相乗効果でより効いてくると思っていました」(黒石)
削りたての豊かな香りは刻々と失われていきます。本当は削ったその場で使いたい。でもそれは物理的に不可能です。そこで、削ってすぐ、30分後、1時間・2時間・24時間後など、時間ごとの風味を検証し、酸化指数がそれほど変化しない範囲を明らかにしました。
「じつは1時間経っても数値的にはそれほど変化しないのですが、酸化指数より人間の鼻のほうが敏感で。私たちの感覚として、1時間置いてしまうと劣化するからもったいない、せっかくやるならもっと短く!と判断しました」(黒石)
風味が衰えないタイミングでだしを取り、そのまま急速冷凍。削りたてに近い風味と冷凍技術の双方を実現できるキンレイにとっての「だしの最高峰」がこうして開発されました。

本当にできるのか? 工場の製造ラインに落とし込む難しさ
「自社工場で削ります」「だしを取るタイミングに合わせて削ったものしか使いません」──
言葉で聞けば単純ですが、とくに「タイミングを合わせる」という時間的な制約は、前後の行程が厳密に決まっている工場では、かなり難易度が高いもの。たとえば「店内で削った鰹節を使っています」という飲食店でも、「朝削ったものをその日一日使う」というやり方が多いのではないでしょうか。冷凍食品を大量生産する工場で「だしを取る都度、タイミングを見計らいながら節を削る」ことのハードルは高く、解決すべき課題は山積みでした。
機械の導入ひとつ取っても、「どこの会社からどんな機種を?」「どんな調整が必要?」「どこに設置すれば効率的?」など検討項目は多岐に渡りました。また、少量を試作するだけなら「削ってすぐ使う」のはさほど難しいことではありません。が、工場で扱うのは一日に何万食という桁違いの量。原料は何百㎏単位、機械や調理器具も大型で、何をするにも手間と時間がかかります。
取り組むべき次なる課題は、「試作で練り上げた工程を、工場の製造ラインに落とし込むこと」でした。
それでなくとも、キンレイ鍋焼うどんのだし工程は、大鍋で昆布を煮る→取り出す→厚削りの節を入れて煮る→取り出す→薄削りの追いがつおを入れて沈むまで待つ→濾す、という料亭のような工程を手間暇かけて行っています。その合間で、タイミングを見計らいながら「数種類の節を削ること」「鰹節は厚さ違いの2パターン削る」という作業が追加されることになるのです。
「ほかのものなら前もって用意しておくこともできますが、節は遅れても早すぎてもいけない。ここまでタイトな制限は、工程の細かいキンレイといえども初めての経験でした。最初はどうなるのか想像もつかない状態で、“本当にできるんかな?”と思ったりもしました。時間を考えながら数をこなさないといけないので、そこは非常に難しいところでした」(稲垣)
でも「実際に削りたての香りや味を体験すると、やっぱり全く違う。これはおいしくなる!」という実感があったからこそ、目の前の課題をひとつひとつ解決し、今も日々改良を重ねながら、「だしを取るタイミングに合わせた自社削り」を実現。工場を訪れる人たちから「厨房のような香り」と評される風味を出すことができています。



5年を費やして軌道に乗せた「削りたて」の鍋焼うどんを、ぜひ!
「おいしい」のために手を抜かないキンレイが、あきらめずにたどり着いた「自社削り」の節。そこに昆布と椎茸の旨みを重ね合わせて、さらに風味の増した黄金色のだしができました。麺は、自慢のだしが染み込むようなもっちり仕上げ、具材はだしの味わいにぴたりとはまる彩り豊かな9種類です。
「本当はできたての鍋焼うどんを食べてもらいたい。でもそれは、お店でなければできません。ではキンレイとして何を目指すかというと、限界や答えを決めず常に挑戦し続けて、私たちにできる限りのおいしさを冷凍で届けることです。鍋焼うどんはキンレイの原点といえる大切な看板商品。そして日本独自のだし文化を味わえる一品でもあります。誰しも一度はうどんを離れてラーメンに走る時期があるかもしれませんが(笑)、折に触れて「鍋焼うどんがまた食べたいな」と長く食べ続けていただけたらと思います。いつか、“だしといえばキンレイ” “冷凍麺といえばキンレイ”と言われるような、オンリーワンの存在になれたら嬉しいです」(黒石)「削りたての節の風味を知らない方も多いと思います。今回の鍋焼うどんは、その風味をできる限り活かしながら丁寧においしく仕上げています。小さなお子さんから年配の方まで、ぜひ幅広い世代の方に食べてみていただきたいです。温めるだけで手作りに近い一杯を味わえますので、家事や仕事、勉強などに忙しい方でも気軽に味わってほしいと思います」(稲垣)
50年積み重ねてきた鍋焼うどんの歴史に、「だしを取るタイミングに合わせて、自社工場内で削った節を使う」という新しい価値が加わった2025年。キンレイが挑み続ける「だしの最高峰」を、今こそ体感してみてください。

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