かつお節ひと筋48年の社長が語るキンレイの味づくり。

発見 26

キンレイのおいしさは、おいしい原材料あってこそ。日本各地の生産者さんとの繋がりが、それを支えています。今回は創業期からお付き合いが続く「かつお節屋」社長の熱きインタビュー。

キンレイ 購買部・横山

2021年入社。讃岐うどんで有名な香川県出身で、瀬戸内海でとれるいりこだしになじみあり。商品開発に携わっていた頃から、削りたての節のおいしさに感動を覚え毎日のように削り節から出汁を取っていた。産地や店舗に足を運び食材へのこだわりを学ぶことがライフワーク。かつお節レシピのイチ押しは、削りたての節をご飯に載せて食べること。

「22歳から70歳の今まで、毎日毎日が勉強です」

横山

かつお節を初めとする削り節の製造・卸売専門店として豊富な経験をお持ちの御社には、創業時から本当にお世話になっています。私自身はまだ社歴も浅いのですが、だからこそ、今回社長の想いを伺えることを楽しみにしておりました。まず、当時の状況を聞かせてください。

削り節店社長(以下、社長)

僕は学校を出て22歳でこの商売に入り、先代から直に仕事を教わりました。その6年後に親父が亡くなって、28歳で2代目を継いでいます。今年70になりますので、かつお節ひと筋48年です。

キンレイさんとのお付き合いは先代の頃からで、やっぱり50年近くになりますね。当時は今の京セラドームの中に工場を持っておられて、僕も何度も納品させていただきました。

横山

28歳というと、ちょうど今の私と同じ年齢です。50年という長きにわたってキンレイの“専門店の味”を支えていただき、感謝と尊敬の気持ちしかありません。当時、どんなきっかけでお取引が始まったのでしょうか?

社長

初代料理長をされていた田中さんが業者を選定されたようです。かなりの量の節が必要とのことで、当然うち以外にも提案をしていたと思いますが、田中さんは「サンプルは誰しもいいものを持ってくるはず。大事なのはその先。親身になってくれるところと長く付き合いたいんや」と言われて、本当にそれを実践してくれはった人です。
先代からも「とにかく真面目に、誠実に。商売やから口上手もあるかもしれんが、そんなことでは長続きせぇへん」と常々言われていて、僕もそれを信条に商売してきました。田中さんもそこを評価してくださったと思います。

削り節ですから、機械と節があれば誰でも作れます。でもやっぱり天然もんなので、産地や時期によって、いいときもあれば、天然ゆえの欠点もある。その中で常にいいものを提供し続けるというのが「目利き」やと思うんです。目利きができへんかったら、この商売は絶対にやっていけません。

では、この目利きをどういう具合にやっていくかというと、これはもう毎日の勉強です。当時、田中さんからも「毎日勉強せなあかんで。学校の勉強はもう終わりやけど、社会では死ぬまで勉強や」と教わりましたが、本当にそうやなと思います。今でも毎日が勉強です。

横山

絶対的な目利きと親身な対応があるからこそ、信頼関係が続いてきたんですね。

社長

それプラス、価格も大事やと思います。僕としては、品質は当然のことで、やっぱり価格も大事なんです。

安売りということではないんですよ。自分の会社に必要な経費を考えて、値段を算出する。それでまわしていけるなら、それが当然の値段です。ものがいいのは当たり前、あとは企業努力で価格をどう抑えるか。これも「親身になる」ということのひとつだと思っています。

国家公務員から転職してきた横山。「真心の手仕事を通して、お客様に直接おいしさを届けられるキンレイの仕事に魅力を感じています。実家では祖母が昆布からだしを取っていたので、そのおいしさは幼くして認識していました。キンレイで大阪のだし文化を深く学び、日本各地の暮らしの中で紡がれてきたそれぞれの食文化に感心しています。」

たった7品目の原料を、要望通りの削り節に仕上げるプロの技

横山

節メーカーとしての特徴やこだわりを教えてください。

社長

節というと一般的にはかつおですが、さば、うるめ、あじなどいろいろあります。うちが原料として扱うのは基本的に7種類。その中でさまざまな配合をし、たとえば同じさばでも脂の多いもの、少ないもの、時期や産地の違いなどいろんな要素を加味しながら「この要望にはこれが合うな」と考えて、商品作りをしています。

基本品目は7つしかないですが、やりようによって、仕上がりはなんぼでも変えられますからね。

横山

決め手になるのは、何の魚種を何割ずつ、という配合だけではないわけですよね。

社長

そうですね。どの産地でいつとれたかによっても違いますし、削る前には節を温めるんですが、その温め方によっても風味がかなり変わります。どのくらいの厚さで削るかでも大きな違いが出ます。本当に何種類でもできるので、それこそ毎日が勉強ですし、飽きることのないおもしろい商売やなと思います。

横山

キンレイの場合、配合して納品していただくアイテムは15種類あり、ひとつひとつに時間をかけて決めていきました。

社長

たとえば「さば30、うるめ70の割合で」というご依頼に対してサンプルを出すと、「えぐみを抑えるにはどうしたらいいですか」「でしたらここをこうしましょう」といった調整があり、変更後のサンプルを出し直します。そんなやり取りを経て1アイテムが決まるので、長いと3〜4ヵ月はかかりますよね。キンレイさんは味への探求心が深いので、こちらもやり甲斐があるんです。

横山

いいものを安定供給するためにどんな工夫をされていますか?

社長

節の原料になる魚は春と秋が漁期です。豊漁の年もあれば、今年はあかんなぁという年もある。「今年のこの産地のはええぞ」と思ったら1年分、できるなら2年、3年分でも買い込みます。

キンレイさんには節と昆布を入れさせてもらってますが、節も昆布も新鮮なものより古いほうがうまいんです。冷蔵庫に入れておけば5年以上持ちますし、日を置くほど味もよくなるので、いくら買っておいても問題ないですね。この商売は現金でのやりとりなので資金力に限界があって、まぁ言うたら常に火の車ですけど(笑)、自分が目利きしたものならとにかく買えるだけ買いますね。

横山

納品いただく削り節は、風味が落ちないように朝一番で削っていただいているそうですね。

社長

キンレイさんからのオーダーは1週間分まとめてお知らせいただいて、何を何日に納品というのが予めわかっているので、一番いいタイミングで冷蔵庫から出し、お届けする日の朝に削るようにしています。毎朝だいたい1時ぐらいに起きて、3時ぐらいには削り始めますね。

横山

筑波工場まで直接届けてくださったこともあったとか。

社長

天気の影響でしたかね、流通がストップしたときがありまして。でも必要なものは今日届けないと工場がとまっちゃいますから。大阪から車で走ると片道700キロぐらいでしょうか、僕が運転してお届けしました。

横山

本当にありがたいことです。

社長

いえいえ。最高の状態のものを指定の時間に届けること。大げさな話かもしれませんが、僕は命かけてでもやっていかなあかんと思ってます。キンレイさんあっての、うちですからね、当たり前のことですわ。

キンレイの顔である「鍋焼うどん」をはじめ、さまざまなだしに使用しているうるめ節。商品に合わせて、脂の多いもの・少ないものを調整してもらっています。

妥協しないキンレイの「もっとおいしく」を叶えるために

横山

頻繁に産地に出向かれている社長に同行し、我々も原料の勉強をさせていただいています。

社長

百聞は一見にしかずで、実際にどう作られているのかを見るのは本当に大事です。たとえば昆布の最高級品に「白口浜」というのがありますが、エリアによって風味に微妙な違いがあります。加工はどこも一緒やし、何十年と目利きしていても何がどう違うのかさっぱりわかりません(笑)。でも実際、とれる場所の数メートルの違いが風味に影響するので、キンレイさんとしてはそこを追究したいと。

横山

まずエリアごとの違いを検証しておいて、「実際、何が違うのか」を確かめに行った、と聞いています。どこがいい、悪いということではなく、キンレイの求める風味というのがあって、それに合うのはどこの昆布なのかを確かめたかったと。

社長

昆布も必ずサンプルを出し、評価いただいてから納品しています。キンレイさんくらい味づくりにこだわっておられると「白口浜ならいい」というわけにはいきません。納得いただけるまで何度でも対応したいと思ってます。それがおいしさに繋がっていきますから。

横山

節のほうでも工夫を重ねていただいています。とくに印象に残っているのが「素削り」をすすめていただいたことです。そこに至るまでには、まず電熱器の導入というのがありました。

社長

節というのは、スチームや電熱で温めてから削らないと、きれいな「花削り」になりません。スチームは文字通り蒸気で蒸すんですが、そうではなく魚自体の水分を温めることで柔らかくするというのが電熱の考え方です。スチームは上品でまろやか、電熱は薫香が強く深みのあるだしが取れます。

キンレイさんの場合、「こんな使い方をして、こんな風味にしたい」という具体的な要望がありますので、「もっと香りを出せないかな」というお話があったときに、いろいろ考えて電熱器を導入したんです。

横山

本当にいろいろ試していただき、見せていただき、勉強になっています。素削りもあれこれ試す中でご提案いただいたんですよね。

社長

「今以上にもっとおいしくするには?」と問われたときに、それやったらやっぱり素削りやな〜と。さっきも言いましたが、見た目をきれいに仕上げるにはまず温めないといけません。温めずに削るのが素削りなので、どうしても粉っぽくなります。でも、キンレイさんは何に使うかというと、だしですよね。それやったらもう、素削りが絶対にうまい。

かなり粉っぽいので、だしの鍋から取り出すときに詰まりやすくなるとか、扱いは大変になります。でもそこは何とでもされるはずなので、「素削りでいってください」とお伝えしました。

横山

数値では分析できない天然成分だけのおいしさみたいなものが、やはりありますよね。

社長

そうなんですよ。化学調味料をいくら入れてもかつお節のほうが絶対うまい。僕はこれ、自信を持って言えますよ。キンレイさんと長いお付き合いをさせていただく中で、自然のもの、天然の旨みを大切にされていることにものすごく共感しています。

横山

社長と一緒に天然もののだしの風味を改良し続けているので塩や醤油などの調味料を減らしてもおいしさが保てています。素材の旨みをそのまま活かせるストレートスープで作っているので、だしにこだわり甲斐もありますね。

社長

それはもうキンレイさんの絶対的な強みと違いますか? 節の使用量なんて冷凍食品業界で日本一やと思いますし、これだけのことをされてるメーカーさんが、よそに負けるわけないやないかと僕は思ってますね。

刃の当たる角度によって削り節の厚みが変わるため、0.1mm単位で調整していただいています。

「何が一番いいのか」を共に突きつめて、これからも

横山

今年は社長のご協力あって、ついに「自社削り」でだしを取る体制が整いました。最初にご相談したときはどう思われましたか?

社長

どんなにいい節を削っても、時間と共に風味が薄れていくのは僕も常々実感してますので、昔からキンレイさんと「何が一番いいのか」という話になると、「そりゃ本当は自分のところで削ってその場でだしを取ること、これにかなうものはないです」と。自社削りを実現できたら味にプラスになるのは間違いないと思っていました。

実際に何年も前から試行錯誤されて、今年から実現されるというのは、キンレイさんらしいこだわりやと思います。商売で言えば、うちで削らせてもらえたらありがたいわけですけど(笑)、キンレイさんがおいしさを極めて伸びていかれたら、うちも一緒に伸ばしていただけると思ってますから。良いものをつくるということに少しでも貢献できていたらこんなに嬉しいことはないです。

横山

削りたてがおいしいというのは、社長もあちこちで広めておられるそうですね。

社長

小学校の子どもたちの前で「かつお節って本当はこんなもんや」というのを出前授業で何カ所も教えています。小さい機械を持って行って、目の前で削るんです。

今の子どもたちは、削り節といえば袋入りの花がつおしか知らない。栄養士さんでも、知らない場合が多いんです。実際に削りたての匂いを嗅いで、食べてもらったら、子どもたちが「これうまいなぁ」「かつお節ってこんなにうまかったんや」言うて、ものすごい喜んでくれるんですよ。

なんでこういうことを教えたいかというと、節ってね、とった魚をわざわざ炊いて、熟成させて、それをまたわざわざ削って、だしを取るわけですよ。そういうだし文化って、世界でも日本だけ。「日本人の味覚の基本はかつおと昆布や」と僕は思ってます。日本のこんな素晴らしい文化を子どもたちに残していかなあかんな、というのを親身に思ってるんですよ。

横山

子どもたちが喜んで食べる姿というのは、削りたてのかつお節がいかにおいしいかを物語っていますね。日本のだし文化を大切に広めていくことは、キンレイとしてもまさに目指しているところです。

社長

節を扱う業界は非常に小さいですが、「だし文化」というのを考えると、日本からなくしてはいけない業界だという自負もあります。50年やろうが100年やろうが、これからも毎日勉強です。精一杯のことをして、若い世代に引き継いでいけたらと思います。

商売で大事なのは「その仕事を好きになること」。そういう意味で、自分でいろんな配合ができて、キンレイさんに満足していただけて、最終的にお客さんに「おいしいなぁ」と食べていただけることが本当に好きなので、かつお節屋で良かったなぁと思っています。

横山

貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

長年のお取引の中で、気候変動による不漁や原料高騰などに見舞われ、決して順風満帆というわけではなかったと思います。そうした中でも決して妥協しない原材料の供給に尽力いただき、さらに自社削りにも非常に親身にご協力いただきました。そのおかげでキンレイのおいしさが守れるのだと、改めて感謝の気持ちでいっぱいです。

今回お話を伺ったかつお節に限らず、一つひとつの原材料に、各生産者のこだわりと想いがあります。食卓に届いているおいしさの背景にあるそうした熱い想いを、キンレイ商品を買ってくださる方々にもっと知ってもらいたいと感じました。

私たちの最終的な目標は、“お客様が「おいしいなぁ」と満足して食べてくださること”です。よりよい商品を食卓に届けられるよう、社長に負けないくらい私自身も日々勉強を重ね、みなさんの協力を得ながら業務に取り組んでいきたいと決意を新たにしました。

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