ふわっととけるワンタンめん、
心に残る一杯を。

発見 05

カドヤ食堂・橘和良さんの飽くなき探究心と真摯に向き合い、キンレイ渾身のワンタンめんがついに完成。開発担当・齊藤と橘さんの対話から、「本物のおいしさとは何か」を紐解きます。

カドヤ食堂 店主・橘 和良さん

大阪・西長堀に本店を構えるカドヤ食堂。「毎日がプレミアム」を掲げ、一杯のラーメンに素材・製法・姿勢のすべてを注ぐ。素材への真摯な向き合い方、生産者への敬意、妥協のない商品づくりには、業界内にも多くのファンを持つ。

キンレイ 商品開発部・齊藤

1998年入社。事業推進部での経験も交えつつ、長年開発業務に携わる。カドヤ食堂監修「中華そば」(2021年)、「つけそば」(2023年)の開発も担当し、橘店主から多くを学ぶ日々。真のおいしさに出会うため、名店に足を運ぶのは重要な仕事であり自身の楽しみでもある。カドヤ食堂での個人的イチオシはワンタンめん味玉トッピング。

パーフェクトとしか言いようがない味わいを、冷凍で表現する

一度食べると忘れられない橘さん渾身のワンタンを、キンレイの解釈で表現するという今回の試み。振り返ってみていかがですか?

齊藤

私自身も大好きで、何回も食べていますが、スープ、麺、ワンタンなどすべての要素が完璧なバランス。おいしい食材をただ集めるだけでなく、その持ち味を最大限に活かしきり、役割をまっとうさせる調理がなされているのを感じます。食べ進むうちに麺が伸びたりスープが冷めても、おいしさが保たれているんです。
橘さんは、ご自身の感性だけでなく、割合や比率を計算し尽くして、まるで設計図に基づくようなアプローチを丁寧に積み重ねておられます。そして、その最高級品質を「食堂」という気取らない雰囲気の中で提供し続けているんです。もう、すごいとしか言いようがない。
今回、私たちはそれを冷凍で表現することになったわけですから、何もかもが厳しい挑戦だという覚悟はしていました。中でも最大の難関は、やはりワンタンでしたね。

橘さん(以下、敬称略)

中華そばにワンタンって、やっぱり相性がいいんですよ。見栄えもするし、欠かせない存在。「雲呑=雲を呑む」と書くでしょう?うちのワンタンのこだわりは、ふわっと口の中でとけるような食感なんです。

その「ふわっととける」を、冷凍で実現しなければならなかったわけですね。

齊藤

はい。皮そのものがおいしいのは当たり前で、冷凍後の食感や品質も考慮しなければなりません。さらに、ワンタンが決まってからの全体調整も過酷でした。ワンタンを入れるとスープの味わいがぼけるので、再度スープを見直す。そうすると今度は麺が釣り合わなくなり、麺も改良していくという……今振り返っても胃が痛くなるような日々でした。

監修店の味を「再現」するのではなく、自社の解釈で構築するというのがキンレイの手法。今回もかなり長期にわたって試行錯誤を繰り返したと聞いています。

齊藤

実は、最初のワンタン試作品は全くダメでした。皮も餡も「これはあかん」と。

なんていうんかな、水餃子みたいでしたよね。中も固まっていて。

齊藤

ショックでしたが、「そりゃ、あかんよな」という思いもあって。橘さんからNGが出るときは、自分でもわかるんですよ。最高峰の味を作っておられる方なので、言うまでもなくハードルが高いです。

うちのワンタンは、温かいうちがおいしいのは当然として、最後の最後まで満足していただけることを目指しています。麺もワンタンも、くたくたに伸びきったものでもおいしいことが大事なんです。最初にガツンとくるインパクトだけじゃなくて、お客さんが最後まで食べきるそのタイミングまでおいしくないと。自分でもそういう試食の仕方をしています。

「カドヤ食堂」店主・橘 和良さん
「カドヤ食堂」店主・橘 和良さん

皮だけで7ヶ月、試作40回以上!ついに見つけたワンタンの黄金比

目指すゴールとして、これ以上の高さはないくらいのワンタン。最初に「あかん」と言われてからの突破口は何だったのでしょうか?

齊藤

自分たちなりの試行錯誤を経て、最終的には皮のレシピをじっくり教えていただいて一から作り直しました。

レシピを直伝!? 橘さんとしては、そこに躊躇はなかったのでしょうか?

聞かれたらなんぼでも答えますよ(笑)。言葉で伝えても簡単にマネできるもんでもないですし。みっちり一緒にやったら、そりゃわかるでしょうけど。齊藤さんの場合はいつも研究熱心で、ちゃんと緻密にやられるという信頼があるので、自然とお教えしました。他社さんとも一緒にやらせてもらってますが、普通はスープにばかりこだわるんですよ。キンレイさんは麺もすごいおいしくつくられるでしょう。こだわりがすごい。ホント、いい仕事されますから。

互いに妥協しない姿勢から信頼感が生まれ、それがさらに良い商品へとつながっていくのですね。皮のレシピを教わってからは順調にいきましたか?

齊藤

何度も試作をして、「これならなんとか」というものをお持ちすると、橘さんから「皮はいいよ」と言っていただけたんです。

僕にとって、ワンタンの命は皮です。ラーメンに餡なしの皮が一枚浮かんでいるだけでも成立すると思ってますから。なめらかで、薄く伸ばしてもへたらない皮が何より大事なんです。

齊藤

「皮はいいよ」と言われたとき、私は全部うまくいったと思い込んでしまったんですが、じつは皮だけだったんです。次の試作では「中があかん」と言われまして。
私自身、カドヤ食堂のワンタンめんが本当に好きで。食べれば食べるほど、全部が大事だと気付かされます。最初はほどけるようなあの皮にばかり注目してしまっていたんですが、そうじゃない、中も計算され尽くされている、バランスが重要なんだと。教えていただいたレシピや心構えを頭に置きながら自分で手を動かしてみてようやく、「こういうことかもしれない」と腑に落ちた感じでした。
結局、そこからさらに2ヶ月。ワンタンの完成だけで約9ヶ月かかっていましたね。

キンレイ商品開発部・齊藤
キンレイ商品開発部・齊藤

真のおいしさ、その基盤は、素材とも人とも誠心誠意向き合うこと

橘さんと開発を進める中で、とくに印象に残ったこと、学びになったことは?

齊藤

人との付き合い方ひとつ取っても、学ぶことは多いです。たとえば、最初から「できない」と限界や制約を決めてくる姿勢には厳しく接されますが、ご自身が真摯に取り組むからこその厳しさなので、私たち開発担当者も非常に良い緊張感を与えてもらっています。そして、その厳しさの根底には優しさがあります。お弟子さんが独立して開業するときは店を休みにして手伝いに行かれるなど、従業員を大切にして、飲食店の厳しい労働環境改善にも取り組んでおられる。業界全体を良くしようという想いは、いつも感じています。
そして、すでにこれだけの完成度なのに、今でもしょっちゅう小麦粉の配合を変えたりスープを見直したり、ずっと進化し続けてるんです。おいしさを追究し続ける姿勢は、すごいとしか言えません。
言うまでもなく、素材との向き合い方、生産者さんとの付き合い方からも学ぶことが多々あります。「届いたものが悪いときだけじゃなく、良いときにも伝える」という姿勢にハッとしましたし、見習いたいと思っています。

どうしてもね、悪いものが届いたときの文句ばっかりになりがちでしょ?
ええときにも、ちゃんと「良かった」と言わないと。たとえば、鹿児島のA級豚肉だとしても全部が全部、同じじゃない。生産者さんは「この良質な部位はどこに送ろうか」と考えるわけです。普段から互いを思い合える関係になっておくことで、「カドヤ食堂に送ろう」と思ってもらえるんですよ。

齊藤

私たちもできるだけ現地に足を運んで、つながりを大切にしています。真のおいしさをお客様に届ける上で、良い素材を各地から調達し、その素晴らしさを確実に活かせるような技術力を高めることが我々の使命だと思っています。

橘さんからご覧になって、キンレイという会社はどんな存在でしょうか?

以前、社内で勉強会をされた際に高級食材ばかりを使った試作をされて、それを僕もいただいたんです。値段を考えない食材を勉強会で使うことをトップが許すというのがキンレイさんらしいというか、すごい会社だな〜と。

齊藤

5年前くらいですね。当時、社長から「お金とか、工場で作れるかどうかとか一旦置いといて、とにかくいいものを作ろう!」とお達しがありまして。それを橘さんにも召し上がってもらったんです。

あれはおいしかったですよ。

齊藤

でも、「ただ良い素材を使ってもそれだけではダメだ」と心底思いました。素材の持ち味やポテンシャルを引き出すための手間を当たり前のようにかけること。「こういう料理を作りたい」という目的や設計思想を持ち、麺・スープ・具材といった全要素を緻密なバランスの上で成立させること。そして、探究を深めて常にアップデートし続けること。
橘さんから教わったさまざまな教訓を活かしていった結果、ラーメンに限らずキンレイの商品全体が変わったと感じています。開発者一人ひとりが料理の仕上がりに対して深く思考するようになりましたし、品質への見方やレベル感が全社的に向上して、これまで以上に妥協を許さなくなりました。結果的に、5年前には「これがベスト」だったはずのレシピでさえ「しょぼい」と感じるほど、全体の品質基準が劇的に進化しています。

キンレイさんはホンマに勉強熱心ですよ。齊藤さんはもちろんですけど、みなさん本当によく食べにきてくれます。

そういう交流って、普通にあることですか?

そんなもん、キンレイさんだけですよ(笑)。そもそも他社さんでこんなに何度も試食することってないですね。最初の段階で「これでいいですか」と持ってこられますから、それを微調整する程度です。齊藤さんは、納得いくまで粘り強く、自ら熱心にやってくれる。食の追究というかね、そういうのは好きなんやろうなと思いますね。好きじゃないとあそこまでできない。天職につかれたんとちゃいますか?

おいしいものを作るというゴールに向けた探究心、食への想い。おふたりの共通点なのかもしれませんね。

僕は子どもの頃から食いしん坊ですからね(笑)。

齊藤

私も食べ歩くのは元々好きですし、今の仕事も大好きです。橘さんから教わる食材やおいしいお店の話もいつも興味深くて。食を通じて、通ずるものはやっぱりありますね。

カドヤ食堂

「心に残るおいしさ」を実現できる、心尽くしの冷凍食品

今回のワンタンめんは、キンレイの中でも特別な意味を込めたプレミアムラインです。通常の商品以上の緊張感はありましたか?

齊藤

既存のラインナップにももちろん思い入れも自信もありますが、カドヤ食堂が常にレベルアップされているので、今回また改めて仕切り直すつもりで臨みました。とにかく橘さんに納得してもらえるものを作ること。それができたら、結果的にプレミアムと名乗るにふさわしいものができると思っていました。

くしくもカドヤ食堂は「毎日がプレミアム限定ラーメンのような」というコンセプトで、本当に驚愕するしかない極上の素材を厳選して使っておられます。プレミアムという言葉にどんな想いを込めていますか?

すごい食材を使った限定ラーメンは、10周年記念など特別な機会に出すようなイメージがあるかもしれません、うちは普段からそのさらに上を目指しているんです。プレミアムなラーメンを日常的に、毎日でも食べてもらえたらいいなと思っています。

カドヤ食堂

おふたりの情熱と開発までの道のりを知ると、「そのワンタンめん、食べてみたい!」と思う方が多いと思います。どんなメッセージを伝えたいですか?

齊藤

価格やパッケージに負けない中身を目指してきました。プレミアムの名前に負けないよう、食べてくださった方の心に残るものになったらとても嬉しいです。お店で食べた直後に鮮やかに残る強い感動というのもありますが、家で食べて30分後にふと「さっきのあれ、おいしかったな」と思い出せるような、記憶に優しくしみ込む味。心に残るおいしさ。そういうものを冷凍食品で手軽に実現することに、大きな価値があると考えています。

もっと値段が高くてもいいぐらいの出来だと思います。もちろん、この値段の中でどれだけいいものが出せるかも腕の見せ所ですが、やったらやっただけの適正価格というのは、やはりあると思っています。そうでないと、続きませんから。

逆に言えば、この値段で味わえるなら非常にお得ということかもしれませんね。橘さんがキンレイに今後期待されることは?

高級食材を活かしてあれだけのものを作れるんだから、ホテルとかでお店を出してもええんちゃいますか?(笑)それは冗談として、僕自身もこどもの頃にキンレイさんのうどんはよく食べさせてもらいましたし、今も嫁さんがうどん好きなのでたまにいただくんです。日常の中で、ひとり暮らしの人とか、仕事が忙しくてごはん作るの大変な人とか、外食も高いし…ってなったときにキンレイさんの価格でこれだけのものが食べれるって本当にすごいことですよね。

ラーメン業界もここ数年で立ち位置が変わってきていますが、ご自身は、今後どうなっていきたいですか?

今は効率化を図って利益を出すお店も増えてますから、専門店であってもエキスを使ったりしてね。自家製麺も減っているので、逆に製麺屋さんが忙しくなって人手不足に悩んでいたり。そういう効率化の流れを逆手にとって、ものすごくいいものを作り続けていきたいです。手間暇かけて、いい店になっていかんとな、と。

齊藤

ラーメンもうどんも、手間暇かけて想いを込めれば、その分確実においしくなります。専門店のみなさまが大切にされているさまざまなポイントをキンレイなりの科学的な視点で紐解き、お店のようなおいしさを保持していくこと。たとえ効率が悪くても、商品ごとに最適な麺・スープ・具材を一つひとつ開発することで、他社にはない品質を実現していくこと。その手間や想いを何より大切にするところが、私たちらしさなのかもしれません。今後も、キンレイだけの「おいしい」を目指し、感動していただける商品を作り続けていきたいと思います。

カドヤ食堂

店舗情報

カドヤ食堂 総本店

大阪・西長堀に本店を構える「カドヤ食堂」は、素材と手仕事に徹底してこだわるラーメンの名店。自家製麺や無化調スープ、厳選されたチャーシューなど、職人技と温もりが詰まった一杯で、多くのラーメンファンを魅了し続けています。

関連記事