ご当地ラーメン開発の舞台裏と
これからのキンレイ

発見 31

日本を代表する「ラーメンの伝道師」大崎裕史さん。キンレイ商品の監修でも長年お世話になっているご縁から、ご当地ラーメンの特徴や、監修商品誕生の舞台裏を語っていただきました。

ラーメンデータバンク 取締役会長・大崎裕史さん

日本ラーメン協会発起人の一人。月に50~70杯、これまでに食べたラーメンは3万杯超。8歳で食べ歩きを始め、47都道府県のご当地ラーメンを制覇。現在は二周目に突入中。「ラーメン文化の伝道師」として、テレビや雑誌のほか講演・審査員など幅広く活動。

キンレイ企画部門・若生

入社以来、キンレイひと筋で商品開発や技術研究を担当。麺やだしのおいしさにつながる研究開発だけでなく、産学連携で冷凍技術の研究などにも関わってきた。商品や工場の取材対応をする中で、キンレイのものづくりに対するこだわりを紹介するようになったのがきっかけで、現在は企画部門でPR関連を担当している。

ご当地ラーメンのど真ん中はどこにある?

新しい商品を開発するポイント、難しさとは?

大崎

キンレイさんのご当地ラーメンは、私もいくつか監修させていただいています。「売れること」はもちろん大切ですが、一番に考えるべきは地元の味にどれだけ忠実かということです。

ただ、ご当地の味って「これがど真ん中」というものが存在しないんですよ。元祖の味もあれば、そこから進化して広がった味もある。たとえば和歌山ラーメンなら井出系と車庫前系があり、博多ラーメンも濃いのと薄いのがある。どこに寄せるかの判断が本当に悩ましいんです。

ご当地を名乗る以上、多くの人に食べてもらえて、かつ違和感のない仕上がりにしたい。私もキンレイさんも麺文化への想いがものすごく強いので(笑)、そこは毎回、相当悩みながらやっています。

若生

家系ラーメンの監修も、まさに「ちょうどいいところ探し」でしたよね。

大崎

あれは結果的にすごく売れたので、よい落としどころだったと思います。ざっくり言うとA/B
の2タイプがあって、私はAで考えていたんですが、キンレイさん側はB。「家系を名乗るなら、どちらの要素も必要」という話になって、最終的にはAに寄せながらBの要素も入れて完成させました。

尾道ラーメンもそうでしたね。特徴はもちろんあるけれど、店によって印象は全く違う。「どこに近づけるか」「特徴をどこまで強調するか」。これという正解はないので、最終的には自分たちで決めるしかない。その難しさと面白さは、監修のたびに感じますね。

若生

地元の人が好きな味と、観光客が好きな味も違いますしね。そこも悩ましいポイントです。

最終的に私たちが出した答えは、「地元の人が好きな味を作る」ということでした。たとえば味噌煮込みうどんは、他地域からすると「ちょっと独特だな」と感じるかもしれません。でも名古屋の方が食べて「あぁ、地元っぽい」と思ってくださるかどうかが大事なんですよね。

万人向けの視点は持ちながらも、ご当地の特徴や、現地の人が好む味というのはしっかり押さえておく必要がある。土地の食文化からずれてしまうような落としどころはダメだ、というのは常に意識しています。

熊本ラーメンの肝は「複雑なニンニク風味」

大崎さんが監修された中でとくに印象的なのは?

大崎

どれも思い入れは強いですが、熊本ラーメンはかなり難航しました。東京では「桂花ラーメン」が有名ですが、キンレイさんとは「地元で一番人気の味を目指そう」と。

熊本ラーメンの特徴はニンニク油なんです。マー油を使ったりニンニクチップを使ったりといろいろなので、いくつかの店を参考に試作を重ねました。最初はA店のスタイルをベースに進めてみたんですが、どうも風味が足りなくて。行き詰まりを感じていたところにキンレイさんが突破口を提案してくれました。A案とB案を合わせたような、「そんな発想なかった!」と驚くものでしたよ。

実際やってみたら、ニンニクの香ばしさとマー油のコクが見事に共鳴して、熊本ラーメンらしい力強さと深みが出せたんです。「これはすごいな」と思いました。

若生

本当は、マー油そのものを作り込みたい気持ちがあったんです。でも量や工程の制約があって、現実的には難しい。そこで、「シンプルなマー油を仕入れて、そこに熊本らしさを自分たちで足していこう」と方向転換しました。

うちの工場には巨大な鉄鍋があるんです。そこでニンニクの焼き具合をコントロールして、生っぽいものから焦げに近いものまで、焼き加減にあえて幅を持たせる。ばらつきのあるものを合わせることで、大崎さんのおっしゃる「熊本ラーメンらしい複雑なニンニク風味」を出せるはず、と考えたんです。

そうして焼き上げたものを粉砕しているので、実はとても複雑なニンニクチップなんです(笑)。それをシンプルなマー油と一緒にスープで炊いて、全体を一体化させることで、結果的に風味を増すという設計です。

大崎

ラーメンの世界って、失敗や制約から新しい味が生まれることが多いんですよ。今回は、工場ならではの制約の中で理想の味を追い求めた結果、まさに“瓢箪から駒”のやり方にたどり着いた。
こういう発想が出てくるのは、やっぱりキンレイさんならではだと思います。

自分が監修した商品を自分で勧めるのは照れくさいですけど(笑)、この熊本ラーメンは、ぜひ多くの方に食べていただきたいですね。

次の一手は「ただ辛いだけじゃない辛口系」

今後、キンレイに期待したいラーメンはありますか?

大崎

ぜひ挑戦してほしいのが、激辛ラーメンですね。たとえば「蒙古タンメン中本」はご当地系ではありませんが、もはやご当地ラーメン並みの存在感がありますし、茨城のスタミナラーメン、岩手の満州ニララーメン、奈良の天理ラーメンなど、辛口を冠したご当地ラーメンは全国にいろいろあります。

そういった要素を少しずつ取り入れたような一杯が作れたら、ニーズはかなりあると思います。

若生

辛口というだけでターゲットはある程度絞られるものの、「辛いもの好き」は一定数いますよね。王道の四川系もあれば、関東で流行しているスタイルもあって、私もいろいろ食べ歩きながら「どこに寄せるか」を考えているところです。

大崎

今、都内で大人気の「七宝麻辣湯(チーパオマーラータン)」は女性客が非常に多いです。野菜がたっぷり摂れるので、「おいしいし、ヘルシー」という受け止め方をされている。キンレイ商品をスーパーで購入されるのはやはり女性だと思うので、麻辣湯は相性が良いと思います。

たとえばスーパーで麻辣湯を買って、野菜も一緒に選んで、お好みでトッピングできますよ、というような、生活に寄り添う提案を冷凍麺でできたらいいんじゃないかなと。

若生

麻辣湯は確かに注目株ですよね。辛みって「味覚」ではなく「痛覚」なんです。辛さだけを追求すると我慢比べみたいな方向に行ってしまう。そうではなくて、日本に昔からある七味のように、辛みだけでない香りや痺れ、香辛料の余韻など、多要素を組み合わせた複雑な構成を練っていくと、女性のニーズにもマッチするのかなと思います。

もし弊社が新たに辛口系を出すなら、「普通の辛口」は作らないでしょうね(笑)。激辛好きのニーズに振り切って、きちんとおいしさで勝負できる一杯を目指したいです。

うどん・冷凍麺でご当地を「永遠に残す」

うどんの可能性についてもお聞きしたいです。

大崎

今、話題のうどん屋さんがありまして。ラーメン二郎の店主をされていた方がラーメン店をやめて、名古屋で開いたお店です。麺はうどんなんですが、スープは肉も野菜も背脂も、完全にラーメン。「二郎みたいなうどん」とでも言えばいいんでしょうか。これがまた、めちゃくちゃうまい。

「なんで誰もこの発想をしなかったんだろう」と思いましたね。キンレイさんはうどんから始まった会社ですし、だしの知見も蓄積されているので、こういった新しい視点のうどんを冷凍で表現できたら、すごく面白いと思います。

若生

うどんのだしはラーメンスープほど極端な変化をしてこなかったジャンルですよね。だからこそ、昔ながらの味わいがしっかり定着している。弊社ではチゲ系の辛味噌うどんやすき焼きうどんのような煮込み系メニューでバリエーションを出していますが、ラーメンほど大胆な変化は出しにくいところがあります。

キンレイは食文化を大切にしながら専門店の味を目指しているので、「だしの構成をガラッと変える」というよりは「今まで以上に磨きをかける」という方向を追求しています。具材の工夫で変化を出すことは多いですね。

新しいタイプのうどんが冷凍食品として並んだときに、皆さんが「あ、これ知ってる!」と自然に手に取ってくださるような流れができれば、冷凍うどんの可能性ももっと広がるのかな、と思っています。

大崎

ラーメン界には評論家がたくさんいますが、うどんの世界にも、その魅力や特徴を分析してわかりやすく伝えられる「うどん評論家」的な存在がもっと増えるといいですよね。そうすれば新しいうどん文化も広がっていくんじゃないでしょうか。

最後に、キンレイに期待することを教えてください。

大崎

ご当地ラーメンを食べに行きたいと思っても、なかなか現地まで行けない人も多いですよね。そういう方が自宅で気軽に「本場のおいしさ」を楽しめるのは、冷凍ならではの魅力だと思います。

日本ラーメン協会が発表しているご当地ラーメンは、今185あるんです。その中から、ある程度知られていて、商品化すると面白そうなものを選ぶと、30〜40くらいには絞られるでしょうか。まずはそのあたりを、一周してほしいですね(笑)。

今後もキンレイさんらしい発想力と丁寧な仕事で、「ラーメンって面白いなぁ、こんなにいろんな味があるんだなぁ」ということを、もっと広く伝えていってほしいです。

若生

ありがとうございます、頑張ります。

弊社はずっと「専門店を超える専門店」を目指してきました。原料にしても作り方にしても、その土地らしい食文化があって、それに根ざした味づくりができているかどうか。いわば、「ご当地の食文化を冷凍で永久保存する」ようなことが、冷凍食品にはできるのかなと思っています。

味の背景にある食文化を改めて大切にしながら、これからも真摯な気持ちでものづくりに取り組んでいきたいです。

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